健康産業新聞 2008年1月16日から抜粋
特集 注目の糖管理素材
「糖管理サプリ」600億円、新健診制度追い風に
メタボ対策を、ビジネスの新たな起点へ
中 高年の3割が糖尿病有病者か予備軍といわれる中、糖尿病の発症につながるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策の一環として、被保険者 40~74歳を対象とした「特定健診・保健指導」が4月に始動する。成果が重視される新健診制度では、保健指導の中で実効性のある支援策としてトクホや健 康食品の活用が注目されている。トクホでは血糖値関連が260億円市場を形成。それ以外の健康食品を含めた市場規模は前年と同水準の約600億円で推移し た。本特集では、糖管理をサポートする素材の中から、近年注目されている素材に焦点を当てた。
中高年の3割、糖尿病患者か予備軍
糖尿病は、膵臓で作られるインスリンの作用低下により、慢性的に血液中のブドウ糖が増え、高血糖になる代謝疾患。Ⅰ型糖尿病(インスリン依存型)とⅡ型糖 尿病(インスリン非依存型)が知られており、国内では肥満、老化、運動不足、遺伝的素質などによってインスリン抵抗性が生じるⅡ型糖尿病が95%を占め る。Ⅱ型糖尿病と肥満との関連については、内臓脂肪などに蓄積された脂肪細胞からインスリンの働きを妨害する遊離脂肪酸やレジスチンと呼ばれる物質が分泌 されることが分かっている。
糖尿病の発症につながるメタボリックシンドロームという概念が注目される契機となった「2005年国民健康・栄養 調査」では、予備軍を含めたメタボリックシンドロームの対象者は1,960万人に上り、40~74歳の3割が糖尿病有病者か予備軍であることが明らかと なった。また昨年8月、人間ドック学会が人間ドックの受診者を対象に行った調査によると、糖尿病と関連の深い項目の異常頻度は「肥満」(構成比 24.4%)、「耐糖能異常」(同12.6%)の2項目がいずれも上昇。「肥満」の異常頻度は過去最高を記録した。厚生労働省の直近のデータによると、糖 尿病医療費は年間1兆1,165億円で、糖尿病合併症を含んだ糖尿病の医療費は1.9兆円に上る。政府が05年からスタートした「健康フロンティア戦略」 では、10年間で健康寿命を2年伸ばすため、「糖尿病の発症率20%改善」を数値目標に掲げた。合併症を引き起こす糖尿病を20%抑えることで、2兆 8,000億円の医療費を削減できるとしている。
糖尿病医療費を減らすには、糖尿病患者や予備軍を健診で早期発見し、生活習慣の改善に取り組み ことが重要だ。4月から実施される「特定健診・保健指導」は、メタボリックシンドロームや糖尿病予備軍の洗い出しを目的としており、健診の対象者は 5,600万人に上る。成果が重視される保健指導では、より実効性のある支援策として、血糖値関連や肥満対策の健康食品の活用を選択肢に入れることは、避 けて通れないとみられる。
血糖値トクホ、100品目に到達 抗糖尿の研究成果も数多く
抗糖尿素材の多くは、生活習慣との関連が深いⅡ型糖尿病を対象に、血糖値上昇抑制や血糖値降下作用、インスリン抵抗性改善、糖代謝改善、糖吸収抑制などに 関するデータの蓄積を進めている。また、近年の研究では、食後血糖値のコントロールの重要性を示す研究データが報告されており、抗糖尿素材でもこの点に着 目した研究成果が出ている。
トクホでは、血糖値関連の許可件数が、先月19日時点で100品目の大台に到達。しかし市場規模は、中性脂肪・体 脂肪関連のトクホ茶との競争激化の中で、前年比微減の260億円で推移した。関与成分は、難消化性デキストリンが91品目と他を圧倒。以下、小麦アルブミ ン(4品目)豆鼓エキス(3品目)、L-アラビノース(1品目)、グァバ葉ポリフェノール(1品目)が続く。表示については、血糖の吸収を穏やかにする 「血糖値が気になり始めた方に適した食品」(36品目)と、血糖値が境界領域の人を対象とした「血糖値が気になる人に適した食品」(64品目)の2種類が ある。
このほか、トクホ以外で抗糖尿の機能性を持つ素材は、カキ、ギムネマ・シルベスタ、乳酸菌生産物質、甘藷若葉、ローヤルゼリー、カイ コ、シルク、桑、ハナビラタケ、キクイモ、バナバ、コタラヒム、サラシア、ゴーヤー、カイアポイモ、パロアッスル、クマ笹、黒酢、亜鉛、クロム、セレンな ど30品目以上に及ぶ。抗糖尿の健食市場規模は360億円前後と推定され、トクホを含めると600億円の一大市場を形成する。
今後も、国家プ ロジェクトのメタボ対策と連動する形で、バックデータに裏付けされた抗糖尿関連の健康食品が活用される局面は広がりそうだ。一方、医療関係者からは薬との 相互作用を懸念する声も挙がっており、医療機関への情報提供や連携の強化は、健全な市場拡大を図っていく上で不可欠となっている。
注目 ~糖管理サポート素材~
糖 管理対応として展開する末端製品の市場規模は260億円前後とみられ、トクホを含めると約600億円の一大市場を形成。市場では血糖値上昇抑制や食後血糖 コントロール作用、糖質の分解酵素を阻害し、糖質の吸収を抑制する素材などいくつかのメカニズムに基づく商品が流通する。抗糖尿作用などの機能性を持つ素 材は30品目近くに及び、注目素材が目白押しだ。素材紹介を交えながら、各社の取り組みをレポートする。
難消化性デキストリン
【素材紹介】
水溶性植物繊維の一種である難消化性デキストリン。天然のでんぷんを原料とし、低粘性で加工性に優れている。食後血糖上昇抑制作用と整腸作用の2つの機能で、トクホの関与成分として利用されている。
【企業紹介】
■―――松谷化学工業
松谷化学工業㈱(兵庫県伊丹市)は、天然でんぷん由来の難消化性デキストリン『ファイバーソル2』、還元難消化性デキストリン『ファイバーソル2H』の原 料供給を展開する。植物繊維含有率は85~95%。水に溶かした時の粘度がほとんどなく、無味無臭であるため、あらゆる食品に添加が可能なことが大きな特 徴。また、整腸、食後血糖上昇抑制、血清脂質低下、体脂肪低減作用など、バックデータを豊富に蓄積する。
カイコ (蚕・かいこ)
■―――ボンビックス薬品
ボンビックス薬品㈱(大阪市中央区)は、韓国政府が所有するカイコ粉末の特許に基づいて抽出したカイコ粉末を使用したタブレットタイプの『ボスリン』を店 販、通販ルートで展開。糖尿病、ダイエット素材として原料供給にも対応する。韓国政府が所有する特許は「カイコ粉末を有効成分として含む血糖降下剤および その製造方法」。韓国で実施したⅡ型糖尿病患者による臨床試験では、空腹時と食後2時間の血糖値が降下することを確認。今まで副作用は一切報告されていな い。
ギムネマ・シルベスタ
【素材紹介】
ギムネマ・シルベスタはインド原産で、ガガイモ科ホウライアオカズラ属の多年草で木にからんでツル状に3~4m成長する。古くからアーユルヴェーダ医学に も取り入れられており、インドでは昔から皮膚病、泌尿器疾患、糖尿病、利尿、整腸、強精薬として利用されてきた。ギムネマ酸が有用成分で、小腸糖吸収抑 制、インスリン分泌抑制などの作用が確認されている。
【企業紹介】
■―――大日本明治製糖
大日本明治製糖㈱(東京都中央区)は、インド産のギムネマ・シルベスタの葉から抽出したエキス粉末『ギムネマ抽出物GS-E』、エキスをCD包接した『ギ ムネマ抽出物GS-X』、錠剤用の精製ギムネマエキス『ギムネマ濃縮物GA-H』、ハードカプセル用の『ギムネマGA-S』など用途に応じたギムネマ素材 を取り扱う。同社は他社に先駆け、20年前よりギムネマ素材の原料供給を開始した。ギムネマ用途はダイエット向けの健康食品がほとんどで、複合品としての 利用が多いという。鳥取大学医学部との研究により、インスリン分泌抑制や糖・脂肪吸収抑制などの生理活性に関するエビデンスを蓄積している。ラットの小腸 を用いた腸管灌流実験や糖輸送電位による実験では、ギムネマ・シルベスタがブドウ糖の吸収を抑制する作用を確認。ラットやイヌに経口ブドウ糖負荷試験を行 い、小腸ブドウ糖に基づく血糖値変化と血中インスリン値変化を調べたところ、ギムネマに上昇抑制作用があることを突き止めた。
甘藷若葉
【素材紹介】
ヒルガオ科サツマイモ属に属する一品種「すいおう」の茎葉。カフェ酸誘導体をはじめとしたポリフェノールを含み、血糖値上昇抑制、血圧上昇抑制などの機能性が確認されている。
【企業紹介】
■―――東洋新薬
㈱東洋新薬(福岡市博多区)は、独自素材の甘藷若葉末のOEM供給を手掛ける。同素材は、「すいおう」の茎葉をまるごと粉砕したもので、6種類のカフェ酸 誘導体をはじめポルフェノールを豊富に含んでいるのが特徴。動物実験や臨床試験により、糖尿病に対する有効性を示唆する結果が得られている。このほか、南 アジアの伝統果実抽出物『ターミナリアベリリカ』、ビワ葉抽出物『バナスリン』、バナバ葉抽出物『ロイスリン』など、抗糖尿を訴求した独自素材をライン アップする。
キクイモ
■―――山陽種苗
山陽種苗・SANYO植物バイオ研究所(山口県山口市)では、『菊芋のちから』(顆粒100g瓶入、2g×30包入)を販売している。天然のインスリンと もいわれているイヌリン(糖質)を含むキクイモを原料とし、ウコンの中でも特にクルクミンや亜鉛の含有量が多いキサントリーザ(クスリウコン)の原末を配 合した。主に通販、種苗店、農協ルートで展開、一部医療ルートでも取り扱いがあるキクイモを配合した『手延菊麺』(5袋・約10食分/だし付)を昨年、新 たに発売した。
■―――ベリー
(有)ベリー(福岡市博多区)は、化学肥料や農薬・除草剤などを一切使用していないキクイモを使用した『菊芋家族』(250㎎×360粒)を販売している。
小麦アルブミン
■―――日清ファルマ
日清ファルマ㈱(東京都千代田区)は、小麦アルブミンを関与成分とする血糖値関連のトクホ『グルコバスター』(5.5g×30袋)を、通販と薬系ルートで 展開する。小麦アルブミンは小麦中に含まれる水溶性タンパク質。電気泳動という分析法で0.19の位置にピークがある「0.19小麦アルブミン」に、食後 の血糖値を抑制する作用を見いだした。同社では、4月から始動する「特定健診・保健指導」に向け、メタボ対策の商材として拡販を進めていく。
アオバナ
■―――新日本製薬
新日本製薬㈱(福岡市中央区)は、願問で薬学博士の草野源次郎氏監修のもと、DNJ、DMDPを高含有した青花を主原料に、ギムネマ・シルベスタやグァ バ、桑の葉、バナバ、ヤーコンなど多素材をブレンドした『推奨糖減康露』(3g×30包)を通販ルートで展開している。八女産(福岡県)の玉露を使用して いるため口当たりがまろやか。また、難消化性デキストリンを関与成分とする血糖値関連のトクホ『さらっとさらり茶』(190g×6缶×5パック)を昨年8 月に発売した。