朝日新聞 2015/8/1
葉にのる白い幼虫に、羽の生えた成虫(蛾〈が〉)。
藤岡市の食品メーカーが作った蚕のチョコレートがみやげ店で人気だ。本物に近い見た目に、一瞬たじろぐ観光客もいるといい、印象は抜群だ。物珍しさに多くの客が手を伸ばすという。
以前、幼虫だけのチョコを販売したところ大当たりした。第2弾は、二匹目のどじょうとなるか――。
丸エイ食品が作った。本業では団子などの和菓子を製造してきたが、2012年、当時、世界遺産への登録を目指していた富岡製糸場を後押しするため、何か一役買おうと考えた。
「目立つおみやげがない」と感じた社長が、蚕をホワイトチョコにしてみては、と思いつきで提案した。
桑の葉にのった蚕の幼虫をイメージしたチョコを販売したところ予想以上の売れ行きに。昨年、「富岡製糸場と絹産業遺産群」が世界遺産に登録され、観光客 も増え、爆発的に売れ出した。生産が追いつかなくなり、納品まで2カ月かかるほどに。昨年12月には製造ラインを新設し、生産数は月2万個から4万個に、 従業員も8人から約20人に増やした。
安定して供給できるようになったことから、新商品の開発に踏み切った。今回は「かいこの一 生」。実際の蚕は、糸の増産のために品種改良されており、繭になった時点で乾燥され、一生を終える。しかし、商品はあえて成虫の蛾になるところまで表現し た。企画開発部の向井優介課長(36)は「本当は広い空を自由に飛びたかったのではないか」と思いをはせる。
成虫のチョコは、標本を見ながら細長い触角や羽の模様を再現した。品種改良で、羽は通常の蛾やチョウと比べると小さい。向井課長は「お菓子で本来の姿を見てもらいたい」。
3個入りで980円(税込み)。問い合わせは(0274・23・0558)へ。今月からインターネット販売も受け付けている。