•  蚕なら何でも良いという訳ではありません。実は利用する蚕を加工するタイミングがあったのです。

蚕は生まれてから餌となる物は桑の葉になり桑の葉の有用成分を体内に貯め込んで4回脱皮(5齢期)し、数日後には糸を吐き繭を作ります。

しかし5齢期の終わりに近づくと体内の絹糸線(シルクの素)が大きくなり桑を食べるのを止め、それまでしなかった排泄を行い繭作りの準備に入り、蚕の身体の色も緑青色から灰白色へと変化していきます。

そこで人体に吸収されない絹糸線になる前で桑の有用成分が濃縮された時期を探す研究が始まり、1番良く桑葉を食べる5齢期であることがわかりました。そして桑の有用成分が消化濃縮された状態が最大になるのが5齢期の3日目の朝だということがわかりました。その有用成分はホルモン物質やビタミン・ミネラル・アミノ酸が豊富に含まれており人体にとってとても有益なものでありました。

  • 蚕粉末の製造法

既存の民間療法の中心は、蚕を熱風で乾燥させ粉末にする方法でした。

しかし熱風で乾燥させると蚕体内にある各種酵素の不活性化を招くことになります。そして各種酵素が含まれている蚕の消化液と血液は非常に酸化しやすく、空気に触れると黒く変色しながら不活化していきます。

そこで不活化しない方法を探す必要が出てきました。そして酸化防止剤等の化学薬品を使えば簡単に解決することは出来ますが、より安全な生薬として利用するためには別の方法を探す必要がありました。

そこで考案されたのが急速凍結法でした。液化窒素ガスで-170℃急速冷凍し、-55℃で48時間乾燥させれば人体に有害な科学薬品を使うことなく蚕粉末の酸化を防ぐことに成功したのでした。

  • 蚕粉末服用による食後血糖値の変化

冷凍乾燥した蚕粉末を使ったキョンフィ大学附属病院での糖尿病患者に対する臨床試験が行われました。

蚕粉末投与試験は、病気の進行度合いによって二つのグループに分かれて行い、Aグループは薬物治療中の患者16名とBグループは薬物治療を受けていない患者8名に対して4週間にわたって行われました。

  • 試験結果、患者達に大きな血糖値変化が表れました。

今まで何年も薬を服用し、食事制限や運動療法をしてきたにも関わらず一向に改善されなかった患者達の数値がたった4週間で改善されたのでした。

特に注目したいのは糖尿病患者が蚕粉末を服用しても空腹時の低血糖を心配しなくても良いという点です。また糖尿病患者に対するもっと長期の臨床試験が行われれば更に大きな血糖降下作用が実証されるでしょう。

インスリン注射で治療されている方に対しても血糖降下作用に対して大きな期待をもって頂けるでしょう。

  • 食後血糖上昇抑制に作用するメカニズム

多糖類である、デンプン・乳糖・ショ糖・麦芽糖そしてその他の炭水化物などは口中と小腸内でまずは分解され、そして単糖類に形を変え血液内に吸収されます。

食べ物はまず唾液中のα-アミラーゼによって小さなデンプンにされ、胃では強酸によって酵素の活動が止まり炭水化物の消化は殆どなされません。

十二指腸に入ると膵液によって再び消化が始まり、各種の糖分解酵素によって糖類は単糖類に分解され血液内に吸収されます。

例えば砂糖・ご飯・麺類などの炭水化物も単糖類に分解され血液内に吸収されます。だから甘い物を食べた後や食事の後には血糖値が上昇する訳なのです。

ところが蚕粉末が食べ物と一緒に小腸に届くと、単糖類に分解する酵素の一つであるα-グルコシダーゼの活性を抑えてくれるので、多糖類の急速な単糖類への分解・吸収を遅らせてくれるのです。だから食後の高血糖状態を上手に調節してくれるのです。

  • DNJ(デオキシノジリマイシン)の存在

蚕粉末は、インスリン抵抗性のある方にも有効に作用して自身のインスリンの効きを良くしてくれます。それは糖分解酵素の働きを阻害する成分として代表される物質として、自然界では桑の葉に存在するDNJ(デオキシノジリマイシン)があります。

そもそも桑の葉にはDNJが約0.2%含まれています。しかし、桑の葉を人間が摂取しても、桑の葉に含まれるDNJや鉄分、マグネシウムなどの有用成分をそのまま吸収することは出来ません。

しかし、蚕が人間の代わりに桑の葉を食べ、消化分解して各有用成分を体内に蓄積しています。その蚕を人間が摂取すると、蚕自身が持っている各有用成分が非常にスムーズに体内へ吸収され、高い作用率を示すのです。

  • 蚕粉末の栄養成分

蚕粉末には、リジン・アルギニンをはじめ18種類のアミノ酸や各種ミネラル分も含まれています。

その中でも代表的なグリシンやチロシン・セリンなどは血中コレステロールを除去し血流を促すと言われているので糖尿病による合併症を未然に防ぐ効果も期待が出来ます。

そのほかに、蚕にはシルクフィブロインがあり、血液中の脂肪分も減少させる事が東京農大の動物実験でわかりました。蚕粉末によってダイエットが出来れば、糖尿病の危険因子を1つずつ減らしていけることにもつながるでしょう。