腎不全、網膜症、神経障害など3つの合併症の中で、もっとも早い時期にあらわれるのが神経障害です。血糖のコントロールがよくない場合、3、4年でこの障害が自覚症状としてあらわれると言われています。

 

1.なぜ神経障害が起こるのでしょうか?

 

①神経とは、もともと電気信号を伝える電線のような性質を持っています。ところが高血糖が続くと、あたかもその電線がさびついたかのように、情報が神経を伝わるのに時間がかかったり、情報が正しく伝わらなくなったりするのです。

②高血糖のために細小血管の壁に変性が起き、血流が悪くなると、神経細胞に必要な栄養が行き渡らなくなり神経障害を起こす一因となります。

 

2.さまざまな神経障害

 

①最も起こりやすい末梢神経障害 

 

  • 神経の分類
神経 中枢神経 脳や脊髄からなる神経
末梢神経 自律神経 内臓の働きや発汗、体温、血圧などを無意識のうちに調節する。
運動神経 手足を動かす、話すなど、体の動きに関わる。
知覚神経 冷たい、熱い、痛いなどの感覚

 

上記神経の中でも中枢神経は糖尿病ではあまり冒されることはなく、最も起こりやすく患者さんを悩ますのが末梢神経です。

 

  • 末梢神経障害の特徴

特に神経のもっとも末梢の部分である足のしびれや痛みなどの知覚障害が多く、これは足先にジンジンした感じや、ピリピリと電気が走るような感じが生じます。また、痛みなどに対する感覚が鈍くなったり、なくなってしまったりする場合もあります。一般にこれらの症状は夜間や安静時の方が激しくなり、左右対称性に、つまり両足にほぼ期を同じくしてあらわれます。糖尿病罹病期間が長ければ長いほど、血糖コントロールが悪ければ悪いほど症状は強くあらわれます。

 

②全身に多様な症状を引き起こす自律神経障害

 

  • 自律神経障害の症状

・立ちくらみ   ・胃のもたれ   ・下痢・便秘

・インポテンツ(男性の勃起障害)

・汗の異常(汗をかく、または汗をかかない)

・膀胱障害(尿が出にくい)

これらの症状は、患者さん自身、初めのうちは気づかないことが多いのですが、重症になると大変やっかいなことになります。

 

★壊疽(えそ)に注意

高血糖によって末梢神経に障害が起こるため、足の感覚がマヒして痛みなどを感じにくくなります。これが壊疽(えそ)のきっかけになるケガや傷などに気づくのを遅らせ、壊疽をどんどん進行させてしまいます。予防には①裸足で歩くことを避け、②靴ずれに注意、③靴下はこまめに取り換え、④火傷しないように注意します。

 

3.神経障害がでたら?

 

  • 低血糖、高血糖になりやすいので、血糖の厳格なコントロールを
  • 長風呂は避ける
  • 足をこまめにチェックして、壊疽に注意する
  • 味覚障害を起こしていると、味付けの濃いものを求めがちになるので要注意
  • タバコは血流障害を助長するので、できれば禁煙を

 

◎血糖値が改善されはじめた頃に痛みを感じることがあります。それは神経障害のために痛みを感じなくなっていたのが、血糖値の改善により神経の働きがよくなるために、以前には感じなかった痛みを感じるようになるのです。ですから自覚症状や自己判断に頼らず医師に相談し、治療を継続することが大切です。