一般的に知られている白い蚕は家蚕(かさん)と呼ばれ、桑の葉だけをエサとして与え完全に屋内で育てます。日本では1977年頃から人工飼育による飼育実験を繰り返し、現在では2齢まで人工飼料で育て、その後は農家で桑の葉を与える方法が一般的です。

家蚕は完全に家畜化されているので自力で逃げ出そうなどとはせず、ひたすら与えられた桑の葉を食べて成長します。

野生の蚕は野蚕(やさん)と呼びます。野蚕の体色は緑色や茶色など様々です。また食べる物も桑の葉一本槍の家蚕と違って、クヌギ、ナラ、カシワ、クリなどの葉を食べます。野蚕のまゆもシルクと呼ばれます。しかし野蚕のまゆは色が真っ白ではなく茶系統が多いようです。中には黄金色や緑色のまゆもあります。同種の野蚕でも住む場所や食べる葉の種類によってまゆの色は微妙に違います。

野蚕糸は家蚕糸に比べて非常に丈夫で太さは2~4倍にもなります。繊維間の隙間も大きくてふんわりとした布地がつくれます。

ただ、「食べるシルク」としての効能はまだ未解明です。家蚕のシルクに含まれる有効成分の多くが桑の葉に由来していると考えるのなら、野蚕の糸には大した有効成分を期待できませんが、まだ研究の余地があります。

日本国内にいる野蚕を天蚕、あるいは山まゆと呼びます。天蚕は初夏に鮮やかな緑色のまゆをつくります。