現代は高度ストレス社会

 

高度な情報化社会となった日本は、産業革命と同規模の社会構造変革が続いています。

知識や情報の価値が高まり、その伝達スピードは20年前とは比較にならないほどです。

世界中のニュースが、1時間以内に集約され各国に配信されるという日常は、便利な反面、情報過多と自分の情報処理能力とのギャップによりストレスを感じることも少なくありません。

常に新しい知識をインプットしていかないと、取り残されるのではないかという焦りを感じさせられます。人々はつねに感覚を研ぎ澄ませ、状況の変化に対応し続ける必要に迫られています。これは強い精神的ストレスとなります。

現代社会が人々に与えるストレスやプレッシャーは、糖尿病であるかないかに関わらず、誰もが感じています。

しかし、糖尿病の人はストレスについて、少し詳しく知っておく必要があります。

なぜならストレスは、いろいろな意味で糖尿病に影響を与えるからです。

 

ストレスとは?

 

ストレスとは、内外からの刺激で引き起こされる反応であり、出来事や状況によって心や身体に生じるものです。現代社会で多いのが、リストラに直面したり、情報化に上手に対応できない、退職や転職、人間関係のトラブルなどです。その他、過労や睡眠不足、不安、緊張、怒り、家庭内の突然の不幸などがストレスの原因となります。

配偶者や可愛がっていたペットの死が引き金になって、500mg/dlを越えるような高血糖になってしまった例もあります。

実際、ストレスは血糖値を上げてしまいます。それはなぜでしょうか?

 

危機を克服するために血糖値を上げる

 

野生動物は、常に猛獣や天敵に襲われるリスクを背負いながら、自分の生存を賭けて他者(獲物)を犠牲にしなければなりません。こういう危険やスリル、恐怖、緊張などはある種のストレスとなります。

命を守ったり維持したりする重要場面で最大限のパワーを生み出すためには、血糖値を上げて「エネルギー満タン」状態にしておかねばなりません。だから緊張状態の時には血糖値と血圧が上がり、心拍も早くなります。緊張によって血糖値が上がるのは、危機に対する防御反応なのです。

ストレスによって血糖値が上がる現代人も、こうした遺伝子情報の影響を受けています。

 

ストレスで血糖値が高くなるメカニズム

 

血糖値を上げるホルモンは多数ありますが、血糖値を下げるホルモンはインスリンしかありません。

ストレスを感じると、防衛反応として副腎髄質からアドレナリンやノルアドレナリン、副腎皮質からコルチゾールというホルモンが分泌されます。これらが肝臓に働きかけ、蓄えられていたグリコーゲンをブドウ糖として血中に放出します。それによって血糖値が上昇します。さらにアドレナリンなどのホルモンはインスリンの働きを弱めるので一層の高血糖を招きます。

 

 

ストレスが問題行動の引き金に(過食・飲酒など)

 

ストレスを感じると、脳はエネルギー源である糖分を普段より多く摂るよう命令するので食欲が増進します。このストレスが過剰な食欲を招き、血糖値を上昇させます。

また、ストレスを発散しようとお酒で気分を紛らわしたり、タバコを吸って気分を静めようとするケースもあります。

ストレスによって引き起こされる過食・飲酒、喫煙などは、すべて血糖コントロールの悪化につながるものです。

 

ストレスが原因でうつになる

 

過剰な精神的ストレスによって、身も心も疲れ果てるとうつ病になりやすくなります。うつにより、ホルモンの分泌や自律神経のバランスに影響が出て(自律神経失調症)、それらの不快な症状が新たなストレス原因となり、何かをやろうとする意欲もなくなり、運動不足を招き、肥満になりやすくなるという悪循環に・・・

 

「過食・飲酒」以外のストレス解消法を見つけましょう

 

心身をリラックスさせ、遊び感覚で楽しめる趣味や運動に打ち込む時間を作りましょう。

散歩や音楽鑑賞・カラオケ・読書・映画鑑賞・サイクリング・山歩き・魚釣りなど・・・自分にあったものを見つけることが必要でしょう。他の人に良くても自分に良いとは限りませんので、いろいろ試してみましょう!

糖尿病になると、食事制限・運動・低血糖の不安などで焦りや負担が多くなり、どうしてもストレスを感じやすくなります。糖尿病であることを否定的に考えることなく、しっかり受け止めて、治療に積極的に取り組むことが大切です。

「糖尿病になったから、あれもできない、これもできない」などと否定的に考える必要はありません。「糖尿病だけど、あれもできる、これもできる」のですから。