蚕は人類に多大な貢献をする「資源昆虫」ですが、蚕の糞にまで非常に高い利用価値があるのです。

蚕の糞を蚕沙(さんしゃ)とも呼びます。糞といっても不潔な物ではなく、内容物の大半は末消化の桑葉であって、やはり多様な有効成分と栄養分が含まれています。蚕沙にはロイシン、ヒスティディン、βシトステロールなどのアミノ酸や尿酸、燐酸、カルシウム、ビタミンA・B群、葉緑素などが含まれます。ですから中国や韓国では蚕沙を漢方薬として利用してきました。漢方では蚕沙を鎮静剤、鎮痛剤として使ったり、脳梗塞などによる半身不随にも処方しました。蚕沙を水に溶かして傷口に塗ると治りが早くなります。これはクロロフィルの作用です。

中国で昔から珍重されていたのが蚕沙でつくった枕です。新生児がこの枕を使うと夜泣きがおさまり、目ヤニが減り汗をかく量も減ると言います。大人でもこの枕を使って寝るとぐっすりと眠れて朝の目覚めも良いのです。

中国では蚕糞枕を頭痛、リュウマチ、神経痛、脳梗塞、不眠症、肝臓病、老眼などの治療に使いました。蚕糞枕の作り方は簡単ですが大量の蚕沙を集めるのは大変な労力が必要です。集めた蚕沙のゴミを取り除きパサパサになるまで乾燥させ、枕の中に入れます。