糖尿病の怖さは合併症にあり
糖尿病の怖さは合併症にあり
糖尿病で失明!?
糖尿病の進行は非常に緩やかなので、多少糖尿病気味だと言われても放置する人が多いようです。そして気がついた時には様々な合併症を発症していて後悔するのです。
成人になってから失明する原因の第二位は糖尿病性網膜症です。
二〇〇五年までは第一位だったのですが、高齢化社会が進むにつれて老人の緑内障が増えて、糖尿病性網膜症による失明比率が若干落ちただけのことであり、糖尿病から失明してしまう人の数は年々増えていることに変わりはありません。
糖尿病性網膜症によって中途失明する人数は一年間で約3000名にもなります。
統計によりますと、2型糖尿病患者を診断した時点での網膜症発症率は二〇%はにものぼりました。糖尿病を発症後20年経過すると、1型では100%、2型でも60%の患者に網膜症が発症します。
糖尿病と目に何の因果関係があるのかと、不思議に思われるかもしれません。
糖尿病になると血液内の糖分が異常に増えた状態が続きます。ですから細い血管がまずダメージを受けることになります。糖尿病は血管の病気とも言えるのです。
目の奥にある網膜はカメラのフィルムにあたる部分です。
網膜は光の強さや色を感じ取り、その情報を脳に送ります。網膜にはたくさんの毛細血管が張り巡らされており、糖尿病によってこの毛細血管が至るところでコブのようにふくれあがります。この段階では視力低下を自覚することはほとんどありませんが、網膜症が進むと網膜の毛細血管がふさがってしまいます。血管がふさがると網膜が酵素不足になります。それを解消しようと新しい血管がつくられますが、この新しい血管はもろく出血を起こしやすいのです。
ここで大出血を起こせば失明につながります。大出血までいかなくても出血を繰り返せば網膜剥離を起こして失明する場合もあります。
血糖コントロールをしっかり行わないと六~十年で約半数の糖尿病患者が網膜症にかかると言われています。
網膜症以外にも糖尿病による目の障害としては白内障や緑内障があります。
失明にまで至ってしまうともう二度と光は見られません。
統計によると日本では一、〇〇〇人の糖尿病患者のうち三人(〇・三%)が失明していることになります。
この数字、多いと見ますか?少ないと見ますか?
人工透析を始める人の三〇%は糖尿病患者
網膜症は糖尿病患者から光を奪います。失明は不幸なこととはいえ、直接命に関わる病気ではありません。
しかし糖尿病性腎症は死の危険を伴う怖い合併症です。
糖尿病発症後十年以上経つと腎臓に障害が起こりやすくなります。
発症後二十年以内に「1型糖尿病」患者の四〇%が腎不全を起こします。
「2型糖尿病」はそれより割合が低くなりますが、決して侮れない数字です。
現在日本で腎不全のため新たに人工透析を受け始める人の三〇%は糖尿病患者です。日本では人工透析原因のトップが糖尿病となってしまいました。
腎臓は血液と共に運ばれてくる老廃物を「ろ過→再吸収→尿として尿管に送る」という仕事をしています。
血液のろ過をするのは糸球体と呼ばれる毛細血管のかたまりで、尿のもとになる「原尿」をつくります。腎臓に運ばれてくる血液の量は一日に一、五〇〇リットルにも及びます。
これだけの血液がそのまますべて排出されれば、人間はカラカラに干上がってしまいます。ですから尿細管では送られてきた原尿の九九%を再吸収します。
糖尿病は「血管の病気」とも言われるように、腎臓においてもやはり毛細血管のかたまりである糸球体に異常を来し、尿の中にタンパクが出てきます。
初期のうちは何の自覚症状もなく、尿タンパクも出たり出なかったりします。
症状が進むと常時尿からタンパクが検出されるようになり、体内の余分な水分やナトリウムなどが排出されずに、体内にたまってむくみが現れます。
腎臓は血圧調整の役目をするレニンという物質を分泌しています。ですから腎臓の働きが鈍ると血圧も上がってきます。
腎臓がここまで悪くなったときにはすでに網膜症や神経にも相当な障害が現れている場合がほとんどです。
こうなると個々の症状がお互いに促進し合うような形で症状は悪化の一途をたどります。腎臓も初期であればその進行をくい止められます。しかし末期まで来てしまうともう残された道は人工透析か、腎移植か、死です。
人工透析とは人工腎臓装置を使って血液をろ過するものですが、透析の日は半日から丸一日つぶれてしまい、おまけに体も非常にだるくなったりします。この透析を週に二回も三回も受けるようになってしまえば、もはや通常の社会生活は送れないことになります。
人工透析は完璧な治療方法ではありません。腎臓の全ての機能を人工的に行うのは無理なので、十年以上の長期透析者は骨障害をはじめとして、全身に及ぶ合併症を覚悟しなければなりません。
※目がかすみ、視力が落ちる男性の絵
※多尿―トイレをしている男性の絵
※のどが渇いてゴクゴク水分補給する男性の絵
※しびれている手足の絵
※化膿している手の絵
糖尿病から様々な神経障害が
糖尿病の三大合併症といえば①目(網膜症)②腎臓(腎症)③神経(神経障害)です。
神経障害というのは精神病のことではなく、主に末梢神経が侵されることを指します。
神経障害の要因の一つとして考えられるのは、高血糖のため神経細胞にソルビートルと呼ばれる物質がどんどん貯まり、結局神経細胞が侵されるというものです。また神経繊維に栄養を供給している細小血管に障害が生じるのも神経障害要因の一つと思われます。
糖尿病患者が一番多く悩まされるのがこの神経障害です。
神経障害の症状として最も多く、わかりやすものとしては、足の先がしびれる感じや痛み、ジワジワ焼けるような感覚などがあります。
痛みは昼間より夜間の方が強くなるようです。また、足がつったり、こむら返りを起こしたりもします。手足の感覚が鈍り針を刺しても痛みを感じなくなったり、冷たさや熱さに対して感覚が低下する場合もあります。
歌手の村田英雄さんが糖尿病で足を切断したというニュースは、決して他人事ではありません。
糖尿病は自律神経にも影響を及ぼします。自律神経が侵されると立ちくらみ、下痢や便秘、排尿の回数減少、排尿後の不快感などの症状が現れます。
非常に稀なケースですが、男性の精力減退やインポテンツなどの要因ともなります。
●網膜症→失明 |
●腎不全→腎移植・人工透析・死 |
●神経症→手足のしびれ・えそ=切断 |