糖尿病を治す薬はあるの?

糖尿病を治すお薬は?
糖尿病を治すお薬は?

糖尿病にも薬はあります。ならばわざわざ辛くて根気のいる食事・運動療法などしなくてもいいではないかと思われるかも知れませんね。

しかしインスリンを分泌しなくなった膵臓を根本的に治せる薬はありません。

糖尿病を薬で根本的に治すのは無理なのです。ですから自己管理のもとで生活習慣を規制し体質を改善していく必要があります。

しかしいくら食事・運動療法を行っても血糖値を下げられない場合に限って薬を使うのです。

治療の基本は食事・運動なので、薬に頼って食事・運動療法をおろそかにすることは病気の悪化を招くということを覚えておいて下さい。薬はあくまでも一時的な臨時措置なのです。

 

インスリンの分泌を促す飲み薬「経口血糖降下剤」

飲む(経口)血糖降下剤は「2型糖尿病」の患者で、食事・運動療法で効果の少なかった人に限り使われます。

経口血糖降下剤はインスリンの分泌作用を促すものですから、インスリン分泌自体がほとんどない「1型糖尿病」の患者には効き目がありません。

また、次のような患者には使えません。

①極端な肥満体 ②感染症にかかっている人 ③ステロイド剤を使っている人 ④妊婦などです。

経口血糖降下剤が開発されたのは比較的最近のことです。

第二次大戦後ヨーロッパで流行したチフスがきっかけで偶然発見されたのです。チフス治療に使われたサルファ剤の一部に血糖値を下げる効果があるとわかり、一九五〇年代に経口血糖降下剤が開発されました。

現在使用されている代表的な経口血糖降下剤としては、スルホニル尿素剤とビグアナイド剤などがあります。

 

 スルホニル尿素剤(SU剤)

SU剤は1950年代から使われている糖尿病の代表的な経口薬のひとつです。、インスリンを分泌している膵臓のランゲルハンス島のβ細胞に働きかけ、インスリンの分泌を促し血糖値を下げます。

また筋肉でのブドウ糖利用を高め、肝臓からのブドウ糖放出を低下させる働きもあります。

SU剤は主に空腹時の血糖値が高い患者に処方されます。

副作用として代表的なものが「低血糖」です。

SU剤はインスリン分泌を促進させる効力が強く、また作用時間も長いので低血糖に注意しなければなりません。

特に、ほかの薬と併用している場合は低血糖を起こしやすいので要注意です。

併用を避けねばならない薬としては、インスリン、BG剤、ピラゾロン系消炎剤、サルファ剤など数多くあります。

そのほか、長期にわたって服用しているとSU剤が効かなくなることがあります。SU剤はβ細胞を刺激してインスリンの分泌を促すものですから、B細胞の自然な分泌機能が低下し、インスリン注射に切り替えねばならなくなる場合があるのです。

(注:薬品名の例→オイグルコン、ダオニール、グリミクロン、アマリールなど)

 

フェニルアラニン誘導体

フェニルアラニン誘導体はSU剤と同じように、膵臓のβ細胞に作用しインスリン分泌を促進させます。SU剤との違いは作用時間の長さです。

SU剤は作用時間が長いので、朝に服用したのに夕方に低血糖を起こしてしまうようなケースもありますが、フェニルアラニン誘導体は効きめが早く作用時間も短いので、食事の直前に飲めば食後の血糖上昇を抑えてくれます。その後数時間で薬理作用は消失するので低血糖の心配が軽減されます。食後は薬理成分の吸収が悪くなるので食直前に服用します。

(注:薬品名の例→ファスティック、スターシス、グルファストなど)

 

ビグアナイド剤(BG剤)

BG剤はSU剤等とは違って、膵臓からのインスリン分泌促進作用はありません。

主に小腸でのブドウ糖の吸収を抑えたり、肝臓での糖の放出を抑えたり、筋肉での糖利用を高めたりします。

副作用としては「乳酸アシドーシス」があります。

これは血液が酸性になることによって気分が悪い・吐く・腹痛・手足のしびれ・息苦しさなどの症状が出るものです。

また、胃腸障害が出る場合もあります。

(注:薬品名の例→メルビン、ジベトスB)

 

α-グルコシダーゼ阻害剤

α-グルコシダーゼ阻害剤は、多糖類を分解する酵素であるアミラーゼ、マルターゼ、スクラーゼなどの働きを阻害して、小腸での糖分の吸収を抑制、遅延させたりします。

この薬は食後の血糖上昇を抑える効果があるので、空腹時の血糖はあまり高くないが食後血糖が高くなる場合に使用します。この薬は食直前に服用します。

単独投与では低血糖は生じませんが、ほかの薬との併用によって低血糖を助長する場合があります。

副作用として腹部の膨張感、放屁などがあります。

また肝機能障害も報告されています。

日本で一九九三年十二月の発売以降、四年ほどの間に七七例の肝機能障害が報告されて、劇症肝炎により二人の患者が死亡しています。

(注:薬品名の例→グルコバイ、ベイスン)

 

インスリン抵抗性改善剤

インスリンは分泌されているが、何らかの理由でインスリンの効きが悪い人のことを「インスリン抵抗性がある」と言います。

このような人に使う薬が「インスリン抵抗性改善剤」です。

一般的に肥満ぎみで、インスリン分泌機能が落ちていないのに空腹時血糖の高い人は、インスリン抵抗性があると言われています。

副作用としては、肝機能障害、悪心、嘔吐、むくみなどがあります。

三共製薬のノスカールいう薬が一般的でしたが、肝機能障害の危険性が高めだと言うことで、二〇〇〇年三月にメーカーが自主的に販売中止としました。ノスカールが原因と見られる肝機能障害で亡くなった人は日本で8名、米国では3年間で61名にのぼりました。

現在は肝機能障害などの副作用がより緩やかな薬品が使われています。

(注:薬品名の例→アクトス)