なぜ蚕粉末が血糖値を下げるのか?

蚕粉末が血糖値を下げる
蚕粉末が血糖値を下げる

韓国では健常者30名を対象にした投薬量決定試験と血糖降下試験も行いました。

健常者に対する臨床試験でも、食後すぐに蚕粉末を投与しました。

次項の表のように一回に一、一六二ミリグラム投与したグループでは一〇〇%の抑制効果を示しました。

八三〇ミリグラムでは七二%、四九八ミリグラムでは六五%の抑制効果でした。

各グループの血糖値の変化はグラフ1、2、3のようになりました。

まずグラフ1の四九八ミリグラム投与グループでは食後四五分の血糖値が徐々に上昇するパターンを現しました。

グラフ2の八三〇ミリグラム投与グループでは最も理想的な抑制効果を見せました。

グラフ3の一、一六二ミリグラム投与グループでは食後の血糖値が空腹時よりも若干下がる水準まで抑制しました。このことから蚕粉末を健常者が服用する場合は一回八三〇ミリグラムが適当であると結論づけられます。

では血糖上昇抑制のメカニズムに関して簡単に説明しましょう。

澱粉、乳糖、しょ糖、麦芽糖、そしてそのほかの炭水化物などは口の中と小腸内にて分解され、「単糖類」の形で血液内に吸収されます。食物はまず唾液中のα-アミラーゼによって小さな澱粉にされますが、胃では強酸によって酵素の活性が停止され炭水化物の消化は殆どなされません。十二指腸に入ると膵液によってまた消化が始まり、各種の糖分解酵素によって糖類は単糖類に分解され、血液に吸収されます。お砂糖はもちろんのことご飯やうどんなどの炭水化物も単糖に分解されるのです。ですから甘い物を食べた後や食後は誰でも血糖値がグンと上がるのです。ところが蚕粉末が食物と一緒に小腸に到達すると、単糖類に分解してくれる酵素の一種であるα-グルコシダーゼの活性を抑えるので、糖の急速な分解を防ぎ、血液での吸収を遅めることによって、食後の高血糖をうまく調節してくれます。

 

糖分解酵素の働きを阻害する成分として最も代表的なものはDNJ(デオキシノジリマイシン)です。DNJはもともと桑の葉に含まれているものですが、蚕は桑の葉だけを食べるので蚕体内に蓄積されて、桑の葉を遥(はる)かに上まわる血糖降下効果を有するのです。

蚕に含まれるDNJは桑の葉に比べて二・七倍にもなり、その吸収率も格段にアップします。

蚕粉末にはDNJ以外にもビタミンやミネラルなど桑の葉由来の成分がたくさん蓄積されているので、糖尿病をはじめとする生活習慣病やメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)などに優れた効果を発揮します。

ですから、蚕粉末は食後の血糖値上昇を抑えるだけでなく、「インスリン抵抗性」を改善し、インスリンの効きを良くするはたらきもあります。

また蚕粉末には十八種類以上のアミノ酸が含まれていますが、その中でも代表的なグリシンやチロシン、セリンなどは血中コレステロールを除去し血流を促しますので糖尿病による合併症を未然に防いでくれるのです。

 

5齢3日の蚕には既に絹糸腺が生成されています。

絹糸腺とはシルクの糸をつくりだす部位です。シルクフィブロインは血液中の脂肪分を減少させることが東京農大の動物実験でわかっています。シルクによってダイエットできれば糖尿病の危険因子をまた一つ減らすことができるうえ、インスリンの需要をも抑えることができるのです。

シルクに含まれるもう一つのタンパク質であるシルクセリシンにも、メタボリックシンドローム改善に効果があることが学会で発表されました。(二〇〇七年五月十五日付産経新聞より抜粋)

 

カイコの繭のセリシンがメタボ改善に効果

カイコの繭(まゆ)などから抽出されるタンパク質「セリシン」の摂取で中性脂肪などが大幅に減少することが広島大学大学院生物圏科学研究科の加藤範久教授(分子栄養学)らの研究で分かった。肥満や糖尿病などのメタボリック症候群の予防や改善に効果が期待されるという。京都市内で20日に開かれる日本栄養・食糧学会で発表される。

セリシンは生糸の精製過程で廃棄される繭の一部から抽出される無味無臭のタンパク質で、これまではアトピー性皮膚炎の改善や便秘解消効果、がんの抑制効果があるとして注目されていた。

加藤教授らは3年前に、セリシンの肥満ラットへの効果を研究中に偶然、血糖上昇が抑制されることを発見。脂肪肝や、動脈硬化などのメタボリック症候群にも効果があるのではないかと実験した結果、中性脂肪は33%低下、コレステロール値も下がった。

加藤教授は“研究が今後進めば、生活習慣病の予防や改善に大きな効果が期待できる。生糸精製の過程での廃棄物から抽出できるので環境保護にも役立ち、新たなシルク産業の突破口になる”と話している。」

 

投与量別の効果

投与量(㎎)         食後45分の上昇抑制効果(%)
498㎎                64.5
830㎎                71.9
1,162㎎               100.0

 

 

 

グラフ1. 498㎎投与グループの血糖値変化

 

 

グラフ2. 830㎎投与グループの血糖値変化

 

グラフ3. 1,162㎎投与グループの血糖値変化